「暗黙知見える化」に使えるツール② 「フローチャート」と「ストーリーマップ」
- 1.フローチャートは「論理の流れ」を描く
- 2.ストーリーマップは「思考と感情の物語」を描く
- 3.まとめ-
1.フローチャートは「論理の流れ」を描く
1-1.フローチャート(Flowchart)とは、人や装置・システム等の一連の作業・思考・判断の流れを図式で表現したものを言います。
矢印とブロック図(四角・ひし形など)を使って、誰が見ても、作業・思考・判断の流れが理解できるようにします。
1-2.私が専門とする特許出願の際に作成される明細書には、図面が添付されることが多いのですが、例えば、機械や装置・システムの動作を説明する際に、よく作成・使用されます。
その一例は、以下の図のようなものです。
これは、私(泉)が代理したあるクライアントの日本の特許第6813403号(発明の名称:「医療・介護分野における多職種連携支援方法及びシステム」)の図ですが、発明者にインタビューした後に、質疑応答を行って描き上げたフローチャートの一部です。

1-3.しかし、暗黙知見える化で使われるフローチャートは、もっと簡単なものが多いと思われます。
例えば、売れる商品を何度もヒットさせている中小企業の社長がいると仮定し、彼/彼女の「新製品アイデア発想法」を見える化して社内で共有しようとした場合に、作成されるであろうと推測されるフローチャートの例です。
このようなフローチャートも、ベースになっているのは、前記社長との打ち合わせやインタビューを通じて引き出した情報です。
顧客との雑談中に違和感を覚える(気づき)
↓
「なぜ困っているのか」を頭の中で再構成(仮説形成)
↓
自社の強み・技術と照らし合わせて方向性を探る
↓
似たような製品・技術の事例を記憶から検索
↓
メモやスケッチにしてアイデアを粗くまとめる
↓
信頼する部下や外部技術者に口頭で話して反応を見る
↓
反応が良ければ、さらに要素技術や実現可能性を検討
↓
製品の具体化(試作・企画書化など)
1-4.このフローチャートも、もっと詳しく書こうと思えば、「信頼する部下や外部技術者に口頭で話して反応を見る」の後で、フローが枝分かれして、
反応が良くなけければ、何が原因かを検討する
↓
再度、自社の強み・技術と照らし合わせて、異なる方向性を探る
といったフローが加わると思います。
いずれにしても、 このように、頭の中の「見えない思考のプロセス」を時間軸や判断の流れに沿って可視化するのがフローチャートです。
その際には、論理的な流れを重視します。
実際の例では、フローチャートには、各ステップで引き出された情報、例えば、考え方のパターンや判断手法と判断基準、判断の手がかりとなる情報などについてのコメントが付属するのが通常だと思います。
2.ストーリーマップは「思考と感情の物語」を描く
2-1.ストーリーマップ(Story Map)とは、あるテーマに沿って、「どのような経験・思考・判断が行われたか」を時系列+階層的に整理して表現したものです。
物語のように、「何が起きたのか」「どう考えたか」「なぜ判断したか」を順を追って並べることになります。
ユーザー体験、思考プロセス、暗黙知の抽出に効果的、と言われています。
2-2.ストーリーマップの例(イメージ)を以下に示します。
ごく簡単のものですが、ストーリーマップのイメージは掴めると思います。
このストーリーマップは、あるベテラン営業担当者が顧客訪問時にとった行動を「主プロセス」とし、それらの行動をとったときの「背景」と、その時に行った「判断」に関する情報、つまり「副情報」を含んでいるだけでなく、それらの判断をした時に得た、又は、その時に使った「気づき」と、それらに基づいてとった「工夫」、という形の「暗黙知」も含んでおり、新人又は若手の営業担当者にとって有益だと思います。

2-3.ストーリーマップは、経営者・熟練者の思考の「流れ」と「中身(気づき・判断)」を同時に見える化できるので、後継者や新人・若手への教育・指導素材として活用することができます。
フローチャートよりも、ストーリー性・感情・背景事情を含めやすい、というメリットがあります。
3.まとめ
3-1. フローチャートとストーリーマップについては、以上述べたとおりですが、それらがどのようなものかは理解していただけたでしょうか?
フローチャートとストーリーマップは、いずれも「暗黙知見える化」に使えるツールですが、一度、インタビューやヒアリングの記録から、対象者の思考プロセスとそれに関連する情報を時系列で抜き出し、 フローチャート形式とストーリーマップ形式の両方で整理して可視化してみると、両者の比較が容易になります。
そして、両形式で整理したものを対象者に見せてフィードバックを求め、「これは自分らしい」と感じてもらえるかどうか、確認してみてはいかがでしょうか。
両形式の特徴と役立つ場面の違いが明らかになり、「暗黙知見える化」の成果が出やすくなるため、「熟練者の技術・技能の消滅」の不安解消につながる可能性が高まると思います。
3-2.フローチャートが「論理の流れ」を描くとすれば、ストーリーマップは「思考と感情の物語」を描く手法と言えますが、いずれも、暗黙知の本質に迫るための大切なツールです。
特に、熟練者から引き出した情報(暗黙知を含む)を整理・検討・分析して、非熟練者(特に後継者)が理解し、且つ、再現できるようにする段階において、これらの特徴とメリットを生かすことで、近年の属人化に起因する「熟練者の技術・技能の消滅」の不安を緩和できるのでは、と考えています。
今回はここまでです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

