1.発明の発掘とは?
「発明の発掘」とは、技術者の頭や身体の中、あるいは、技術者が持つ情報の中に埋もれている暗黙知(経験知)を、技術者との対話などを通じて引き出し、見える化(言語化、図像化)することによって、新たに発明を生み出すことです。
発明の発掘自体は、特に、特許取得に熱心な大企業で以前から行われていますが、発明の発掘にも、その成果に大きく影響する注意事項があります。
ご存じですか?
2.発明の発掘の必要性
2.1 研究、開発、設計といった業務において、技術者(エンジニア)自身が意図して発明(技術的な新しいアイデア)を生み出そうとしている時は、発明の発掘など必要ありません。技術者自身が気づくからです。
しかし、技術者の頭の中や身体、あるいは、検討結果や実験結果等の技術情報の中には、技術者が意図していない発明が埋もれていることがあります。この場合、発明は暗黙的に存在するだけですから、技術者自身も気づかないのです。意志をもって探さない限り、発明は発掘できません。
また、埋もれているのが発明の「タネ」だけの場合もあります。この場合には、その「タネ」を発明の形にすることまで考えないと、発明は発掘できません。
以上の理由から、「発明の発掘」という仕事が必要になるのです。
2.2 「発明の発掘」が実際に実行される状況は、例えば、基本発明の保護のために、早急に、改良発明や関連発明を生み出す必要がある場合や、同業他社の参入防止のために、早急に、代替発明や迂回発明を生み出す必要がある場合です。この状況では、必要性が特に高くなります。
発明の発掘が必要な理由がもう一つあります。それは、技術者の発明ノルマ達成のためです。(これは大企業の場合ですが・・・。)つまり、新技術・新製品の研究や開発や設計を担当している技術者は、発明を生み出すことが業務の一部になっています。というか、発明は自分の業務の成果の一部でもあるのです。
このため、「年間○件以上の発明提案書を書く」というように、ノルマになっている企業も多いようです。
「発明提案書」というのは、技術者が自分が生み出した発明を担当部署に開示するために記載する書面です。
ですから、技術者の発明ノルマ達成のたにも、発明の発掘は必要なわけですね。
3.発明発掘時の注意事項
発明を発掘する際に注意する事項があります。
(1)技術者の頭や身体の中あるいは技術情報の中に含まれている具体的な発明(製品化できる程度に具体的なもの)と、それを上位概念化して得た抽象的な発明(特許明細書に課題解決手段として記載する程度に抽象的なもの)とを区別すること
⇒前者の発明についての不明点は、知術者に質問しないと分かりませんが、後者の発明についての不明点は、前者の発明を上位概念化する担当者(弁理士等)に質問しないと分からないからですね。両者に質問することもありますが。
(2)発掘する発明にとって一番大事な、「課題を解決する原理・メカニズム」を明確に言語化すること
⇒それが発明の本質(エッセンス)だからです。当然のことです。
(3)発明発掘の目的が、自社実施技術の保護用の参入障壁を作るためなのか、その参入障壁を回避する代替発明や迂回発明の防御用の参入障壁を作るためなのかを区別すること
⇒発明を発掘する段階から特許を取る目的を知っておかないと、取った特許が無駄になる恐れがあるからです。